恋味甘い【短編集】
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「美咲、聞いてる…?」
「えっうん。」
文化祭の準備が始まるまでの間、奈々のノロケ話しを聞いていた。
「俊哉ってさ、不思議な力があるよね」
「不思議な力?」
あたしが尋ねると奈々は笑顔でうなずく。
「俊哉は…人の気持ちを変える力があるもん。」
「えーそう?」
「うん!だってあたし、前までなんとも思ってなかったのに、いつの間にか…好きになってたんだもん。」
ズキン
「そう言われればあいつ、凄いね。」
凄いよね。あたしの気持ちも変えるんだもん。
『ガラガラ』
先輩たちが入ってきて、話しをやめた。
「では、みんなが持ってきた毛糸を出してー」
「―あ」
「どうしたの奈々?」
「・・・毛糸忘れてきた」
―え?
なにそれ…
なにそれ
なにそれ―
嫌になってあたしは走って教室を出た。