恋味甘い【短編集】

−−−

「美咲、聞いてる…?」


「えっうん。」



文化祭の準備が始まるまでの間、奈々のノロケ話しを聞いていた。


「俊哉ってさ、不思議な力があるよね」



「不思議な力?」

あたしが尋ねると奈々は笑顔でうなずく。



「俊哉は…人の気持ちを変える力があるもん。」

「えーそう?」


「うん!だってあたし、前までなんとも思ってなかったのに、いつの間にか…好きになってたんだもん。」




ズキン

「そう言われればあいつ、凄いね。」



凄いよね。あたしの気持ちも変えるんだもん。


『ガラガラ』



先輩たちが入ってきて、話しをやめた。

「では、みんなが持ってきた毛糸を出してー」








「―あ」


「どうしたの奈々?」




「・・・毛糸忘れてきた」





―え?


なにそれ…



なにそれ
なにそれ―



嫌になってあたしは走って教室を出た。

< 43 / 68 >

この作品をシェア

pagetop