さよならが沈んでいく。
センパイ


私の先輩。センパイ。


目を閉じて、思い出す。


花のようなひと。どの花、とかは、よくわからないけれど。――花のよう。


彼はいま、どこで何をしているのかな。


私たちは、お互いの電話番号も、メッセージアプリでのアカウントも、住所も、何も知らない関係だった。


少しずつ、少しずつ、距離を縮めていく関係だった。


園芸部の私。帰宅部の先輩。


私が花に水をやって、先輩がそれを見て、さほど重要ではない、愛おしい話をしていた。

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