さよならが沈んでいく。
『櫻井』
先輩は目を細めて、私の髪に埋もれた桜のはなびらを指先ですくった。
ありがとうございます、そう言って顔を上げると、先輩の髪にも、はなびらが。
背伸びをして、背伸びをして、指先が震えて、触れて。
『はは、ありがと』
先輩は私の頭を撫でた。優しい優しい、あたたかいてのひらで。
――決壊した。思いきり泣いた。
先輩は笑って、『さよなら』と言った。
待って。まだ、さよならなんてしたくないの。
待って。まだ、言いたいことがたくさんあるの。
涙が重りになって言葉が地に落ちていくから、何も言えなくなってしまって。
先輩がさよならを望んでいるのなら、と思いながら、大きく大きく手を振った。