さよならが沈んでいく。
*
学校に行かないと。そう思って、目を開けた。
先輩。センパイ。
先輩が、心の中からどうしても消えなくて。
あのとき、さよならを告げなくてよかったと思った。
さよならさえ言っていなければ、また、会えるかもしれないという希望を捨てずに済むから。
駅までの道のりの中、すっかり緑に変わった桜の木を見上げる。
いちど、目を閉じて。
あのはなびらを、校内で舞っていたはなびらを、思い出す。
目を開けた世界、木々の中。