さよならが沈んでいく。





学校に行かないと。そう思って、目を開けた。


先輩。センパイ。


先輩が、心の中からどうしても消えなくて。


あのとき、さよならを告げなくてよかったと思った。


さよならさえ言っていなければ、また、会えるかもしれないという希望を捨てずに済むから。


駅までの道のりの中、すっかり緑に変わった桜の木を見上げる。


いちど、目を閉じて。


あのはなびらを、校内で舞っていたはなびらを、思い出す。


目を開けた世界、木々の中。

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