【短】一年越しの片思い
10/7・夜・暗い帰り道
僅かな明かりは、君の姿すら留めさせようとはしなかった。
生憎、街灯は間隔が異様に広く、その中間はよく見えなくなっていたのだ。
ただ、見失わないようにその存在を確かめるので精一杯だった。
隣の短い返事が心地よく帰路に響く。
君の力のこもった右手から左手に温かさが伝わって、そのまま心まで流れ込んでくるのを感じ、なんとも言えない感情になる。
それさえも愛おしくて、君の手を握り返した。
隣に意識を集中させると、君が青白い月の光に照らされて、恥ずかしそうにはにかむ。
それと同時にじわじわと、感情が溢れて、結界を超えた水面のように止まらなくなった。
歩くのを止めた僕を見て、不思議そうに半歩前で覗き込む君。
さらさらと、あの日から短くなった髪が揺れて、シャンプーの匂いがした。
君が近くにいるだけで、これでもかと言うほど幸せになる僕は、嬉しさの余り、全身が震えそうだ。
その振動をどうにか抑えて、右手で胸元まで手繰り寄せた。
耳まで赤くして、俯くなんて、聞いてない、可愛すぎる。
僕の手を添えた頬を、ゆっくり上を向かせると血色の良い唇が目に入った。
暗くて形をよく捉えられないからこそ、こんな大胆なことができた。
君に触れようと、首を傾ける。
君も、目を閉じたのを感じ取った。
触れるまであとほんの少し。
僕なら、君を泣かせたりしないから。
生憎、街灯は間隔が異様に広く、その中間はよく見えなくなっていたのだ。
ただ、見失わないようにその存在を確かめるので精一杯だった。
隣の短い返事が心地よく帰路に響く。
君の力のこもった右手から左手に温かさが伝わって、そのまま心まで流れ込んでくるのを感じ、なんとも言えない感情になる。
それさえも愛おしくて、君の手を握り返した。
隣に意識を集中させると、君が青白い月の光に照らされて、恥ずかしそうにはにかむ。
それと同時にじわじわと、感情が溢れて、結界を超えた水面のように止まらなくなった。
歩くのを止めた僕を見て、不思議そうに半歩前で覗き込む君。
さらさらと、あの日から短くなった髪が揺れて、シャンプーの匂いがした。
君が近くにいるだけで、これでもかと言うほど幸せになる僕は、嬉しさの余り、全身が震えそうだ。
その振動をどうにか抑えて、右手で胸元まで手繰り寄せた。
耳まで赤くして、俯くなんて、聞いてない、可愛すぎる。
僕の手を添えた頬を、ゆっくり上を向かせると血色の良い唇が目に入った。
暗くて形をよく捉えられないからこそ、こんな大胆なことができた。
君に触れようと、首を傾ける。
君も、目を閉じたのを感じ取った。
触れるまであとほんの少し。
僕なら、君を泣かせたりしないから。