月夜見の女王と白銀の騎士
「何より、ランベルト様はアクアルーナの姓を持つ方です。唯一の親族を大切にしたいんです」

 難しいことを全て取っ払った正直な気持ちを告げると、イアンは小さくため息を落とす。

「あなたは甘い。王族にとって親族の存在は危険を孕むことが多い。特にランベルト大侯爵は、いつどのように蹴落とすか、メイナードが王位に就く前からそればかりを考えていた人だ。大切になどしても痛い目を見るだけだ」

「そうかもしれません。不安がないといえば嘘になります。でも、信じなければ信じてはもらえないと思うんです」

 窘められても引かないメアリの瞳には揺るぎがなく、そこに先王メイナードの面影を見たイアンは苦笑した。

「わかりました。陛下の仰せのままに。けれど、暫くはご家族同様、行動の制限はさせていただきますがいいですね?」

「はい、ありがとうございます! あっ、間に合うようであれば、明日の晩餐会にはご家族も招待してください。もちろん強制ではなく」

 出席し辛いのであれば断ってもらってもいいようにと頼むと、イアンは「承知しました」と頷く。

「では、明朝、ランベルト大侯爵を釈放、大侯爵夫人とご令嬢に招待状を届けさせます」

「本当にありがとうございます、イアン様」

 喜びに微笑みを浮かべるメアリにイアンはまた息を吐く。

「陛下、いい加減に私のことは呼び捨てでお願いします」
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