月夜見の女王と白銀の騎士
微笑みを携えた青年の視線が、メアリの持つ剣へと向かう。
「剣など手にして、どうかなさいましたか?」
「……何か、ご用ですか?」
心臓が嫌な音をたてて暴れ始めた時、メアリは青年の背後に広がる控えの間にて静かに横たわる騎士を見た。
目を見張り、咄嗟に剣を構える。
「彼らに何をしたの?」
メアリが全身で警戒して訊ねると、青年は笑みを崩さないまま唇を動かす。
「香りで眠ってもらってるよ。貴重な薬だから乱用はできないんだけど、僕ひとりで騎士たちを相手にするのは大変だし、騒がれたら君を連れていけないから」
「香り……? この甘い香りのこと?」
「そうだよ。君にもあげる」
にっこりと笑って言いながら、青年が懐に手を入れるが、メアリは阻止すべく剣を突き付ける。
青年はピタリと動きを止め、「怖いなぁ」と小さく笑った。
「連れて行って、どうするの?」
「だってメアリ女王陛下はデーアの末裔でしょ?」
デーアの末裔と聞いて、メアリは驚く。
ベルグの町に住み、類まれなる力を持っていたとされるデーア族。
ティオ族と同じく、今では知る者も少ないはずだが、なぜ青年はメアリをデーア族の末裔だと思っているのか。
(違う。私はティオ族の巫女の末裔)
神の末裔として神聖視されていたというデーア族とは違う。
「剣など手にして、どうかなさいましたか?」
「……何か、ご用ですか?」
心臓が嫌な音をたてて暴れ始めた時、メアリは青年の背後に広がる控えの間にて静かに横たわる騎士を見た。
目を見張り、咄嗟に剣を構える。
「彼らに何をしたの?」
メアリが全身で警戒して訊ねると、青年は笑みを崩さないまま唇を動かす。
「香りで眠ってもらってるよ。貴重な薬だから乱用はできないんだけど、僕ひとりで騎士たちを相手にするのは大変だし、騒がれたら君を連れていけないから」
「香り……? この甘い香りのこと?」
「そうだよ。君にもあげる」
にっこりと笑って言いながら、青年が懐に手を入れるが、メアリは阻止すべく剣を突き付ける。
青年はピタリと動きを止め、「怖いなぁ」と小さく笑った。
「連れて行って、どうするの?」
「だってメアリ女王陛下はデーアの末裔でしょ?」
デーアの末裔と聞いて、メアリは驚く。
ベルグの町に住み、類まれなる力を持っていたとされるデーア族。
ティオ族と同じく、今では知る者も少ないはずだが、なぜ青年はメアリをデーア族の末裔だと思っているのか。
(違う。私はティオ族の巫女の末裔)
神の末裔として神聖視されていたというデーア族とは違う。