月夜見の女王と白銀の騎士
 謁見の間にいたランベルトの従者はひとりだった。
 あの時すでにひとりは衛兵に紛れる準備を進めていたのだろう。

 ルーカスがやる気に満ちた目でオースティンを見る。

「どうする団長。ランベルト大侯爵の屋敷に向かうか?」

 オースティンは顎からもみあげにかけて生える男らしい髭をひと撫でし、「ふむ……」と考えこんだ。
 代わりにイアンが険しい表情で口を開く。

「踏み込むにも確証がない」

 犯人がランベルトの従者でなかった場合、メアリの失脚を計る機会をランベルトに与えかねない危険があるのだ。
 城門警備にあたっていた兵に顔の確認を取ろうにも、焼け爛れた顔では判別もつきにくい。

「身を焼くという手段に出たのは、自身が証拠となるためか」

 ひとりごちるように口にしたイアンにライルは問う。

「ランベルト大侯爵の目的はなんです?」

「あの方が望むのは明白。王位です」

「ならなぜ暗殺ではない? もし焼死した衛兵が従者なら、そいつは命まで賭したんだ。攫わなければ成しえない目的があるということだろう?」

 ライルの言葉にユリウスは、メアリの力のことを真っ先に考えた。
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