月夜見の女王と白銀の騎士
 手がかりを得たイアンは、あっという間に今後の予定を組み立てる。

「教会については私の鴉たちに急ぎ探らせる。ヴェロニカ様の護衛は引き続きクラウスの部隊からサポートを。オースティンは」

「わかっている。いつでも動けるよう騎士団を整えておく」

 オースティンが任せろとしっかり頷き、その他の確認が住むと軍議はお開きとなった。

(イアン殿の諜報員たちは仕事が早く失敗も少ない。場所に間違いがなければすぐにでも救出に向かうはずだ。メアリ……どうか無事でいてくれ)

 ユリウスは苦し気に眉を寄せ、祈りながら立ち上がる。
 会議の間を出ていく者たちの波に乗り、出入り口に向かう途中、ライルが呼び止めた。

「ユリウス、ちょっといいか?」

「……なにか?」

 用件を尋ねてみたものの、何を問われるか大方予想はついている。

「満月の晩にメアリが教会を見たとはどういうことだ? 見たのに、場所が定かではないのか?」

 もしかして満月の晩に一度攫われていたのかと首を傾げたライル。
 ユリウスはやはりその話かと逡巡する。

 先ほどはうまく流されていたが、ライルはメアリが攫われた理由に疑念を抱いていた。
 とはいえ、メアリの予知能力について、許可なく他言するわけにはいかない。
 ライルが、ティオ族の村があったフォレスタットの王子でもだ。

 だが、ならず者たちに襲われた際、窮地を救われた。
 女性に対して軽い人物ではあるが、悪い人物ではない。
 何より、攫われた理由が、行方知れずとなっているライルの親友の恋人に繋がるのではと考えているはずだ。
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