月夜見の女王と白銀の騎士
「お前を殺せば、アクアルーナは私のものとなる。元々、機会を見て幼いうちに殺してやるつもりだったが、ようやく始末できるな」

 暗殺を示唆する言葉に、メアリは眉を下げた。

(お婆様の予知は、やはりランベルト様のことだった……)

 口振りからして、力のことは知らずとも、手にかけるつもりだったのだろう。
 イアンの予想は的中したのだ。

 ゆっくりと剣を抜くランベルト。

(暗殺される運命からは、逃れられないの?)

 メアリは、変えられる未来と変えられない未来があるのを知っている。
 特に、死に関するものは修正力が凄まじく、死の運命から救うのは難しい。
 だから、メアリは自分が今生きていることは奇跡だと思っている。
 両親の深い愛と、イアン、ジョシュア、オースティンの絆や想いが起こしてくれた奇跡だ。

 だが、奇跡は王女の道から外れたからこそ生まれたものだとしたら。
 本来の道に戻ることは即ち、暗殺という運命の歯車を動かしたことになるのでないか。

 迫る死の恐怖がメアリを弱気にさせる。

(だめ……だめだ。ここで諦めるわけにはいかない。私は、父様に約束をしたんだ)

 墓前で誓った。
 アクアルーナのために、精一杯、尽力していくと。

「私は王になる。そう、そうだ。流れているのだ」

 血走った瞳を見開き、高揚するランベルト。
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