月夜見の女王と白銀の騎士
とうとう膝から崩れ落ち、床に倒れたランベルトは口から大量の血を吐いた。
「ランベルト様!」
手当をしようと必死に縄をほどこうともがくメアリを、息も絶え絶えにランベルトが見つめる。
「しっかりしてください、ランベルト様っ」
「ち……ち、うえ……なぜ、私を……てくだ、さら……」
死の間際に見るという走馬灯が脳裏に過っているのか、ランベルトは小さな声で独り言を呟き続ける。
「私では駄目なら、……っ……子に……ヴェロニカ……おま……は、女王に……私のために、女王、に」
震える手をメアリへと伸ばすランベルト。
握ってやりたくとも縄に拘束されてできないメアリは唇を噛んだ。
ランベルトの双眸から涙が落ちる。
「な、ぜ……誰も……わ……しを、認めて、くれ……ぬの……」
最期、絞り出すように吐かれた本音が、メアリの心を締め付けると、ランベルトの腕が力を失い事切れた。
ダリオは「お疲れ様」と労い、ランベルトから剣を抜き取る。
「彼は、僕と同じだ」
「同じ……?」
涙目のメアリに、ダリオは口元だけで微笑む。
「この世界は、幸と不幸でできている。誰かの幸せは誰かの不幸であり、僕や彼に与えられたのは不幸だ。君にはどちらが与えられた?」
質問を受けたメアリは、ダリオの心が傷ついてきたことを悟った。
その傷は深く、癒えないままなのだろう。
ヴラフォスの前皇帝を憎んでいたモデストのように。
「ランベルト様!」
手当をしようと必死に縄をほどこうともがくメアリを、息も絶え絶えにランベルトが見つめる。
「しっかりしてください、ランベルト様っ」
「ち……ち、うえ……なぜ、私を……てくだ、さら……」
死の間際に見るという走馬灯が脳裏に過っているのか、ランベルトは小さな声で独り言を呟き続ける。
「私では駄目なら、……っ……子に……ヴェロニカ……おま……は、女王に……私のために、女王、に」
震える手をメアリへと伸ばすランベルト。
握ってやりたくとも縄に拘束されてできないメアリは唇を噛んだ。
ランベルトの双眸から涙が落ちる。
「な、ぜ……誰も……わ……しを、認めて、くれ……ぬの……」
最期、絞り出すように吐かれた本音が、メアリの心を締め付けると、ランベルトの腕が力を失い事切れた。
ダリオは「お疲れ様」と労い、ランベルトから剣を抜き取る。
「彼は、僕と同じだ」
「同じ……?」
涙目のメアリに、ダリオは口元だけで微笑む。
「この世界は、幸と不幸でできている。誰かの幸せは誰かの不幸であり、僕や彼に与えられたのは不幸だ。君にはどちらが与えられた?」
質問を受けたメアリは、ダリオの心が傷ついてきたことを悟った。
その傷は深く、癒えないままなのだろう。
ヴラフォスの前皇帝を憎んでいたモデストのように。