月夜見の女王と白銀の騎士
「幸せも不幸もどちらもです。どちらかだけじゃなく、きっと皆、どちらも経験する。それに、与えらたのではなくて、幸せかどうかは生きていく中で、人それぞれに感じるものだと私は思います」

 ランベルトは不幸ばかりの人生だったのか。
 今となっては知ることはできないけれど、幸福だと感じる瞬間はあったのかもしれない。

 自らを幸か不幸か、どちらかに分類しないメアリに、ダリオは「ああ、なるほど」と頷いた。

「僕と君は永遠に理解し合えないということか。君はどん底を知らないんだもんね。当然だ」

「どん底を知っているのなら、幸福も知っているでしょう?」

「知っているよ。僕の幸福はあの方と出会えたことだ。だから、こうして生きて、君を捕らえた。そうすれば、あの方も僕もさらに幸せになれる」

 うっとりとした表情で語るダリオは、感嘆の息を吐くと「ああ、そうだ」と指笛を吹いて部下を呼んだ。
 武装した数名の兵士がダリオに頭を下げる。

「お呼びでしょうか」

「彼を女神様の元へ送っておいて」

「承知しました」

 兵士たちがきびきびと動き、ランベルトを聖堂の外へと運ぶ。

(ランベルト様……何もできなくてごめんなさい……)

 心の中で手を合わせ、最期まで歩み寄ることができなかったことを悔やみながら見送る。

(それにしても、ダリオは何者なの?)
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