月夜見の女王と白銀の騎士
 首都アクアルーナに住まう民は、傍若無人なランベルトと異性関係にだらしのない娘ヴェロニカの親子を良く思っていない者が多い。

 代々、アクアルーナ王は世襲制である為、世継ぎのいないメイナード王が退位したらどうなるのだという不安の声も聞こえていたほどだ。

 布告により、王女の存命とランベルトの投獄情報が公表された際は、どちらも目出度いとどこの酒場も大賑わいだった。

 ランベルトを釈放したとなれば、国民の心は再び不安に揺れ動くだろう。

 即位して早々メアリ女王陛下は何を考えているのだと、不満を募らせる者も出てくるはずだ。

 釈放の話を受けた時、イアンは、陛下も民の心を理解しているが、その上でランベルトの変化を望んでいるとのことだった。

 やはり上に立つ者としては甘いと、イアンは零していた。

 オースティンも『そうだな』と答えたが、しかし良く言えば慈悲深く、メアリの思いやりがヴラフォスとの同盟に一役買ったのも確かだ。

 メアリの持つ甘さは、相手の心を救い上げる優しさが含まれている。

 メイナードも人の心を溶かすのが上手かった。

 それはメイナードが生まれながらにして持つ穏やかな気性によるものだが、故に慕う者は多く、政敵が少なかったといえる。

 メアリとメイナードはよく似ていると、先王を慕う臣下たちはみな感じており、オースティンとイアンもまた同じくだ。
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