月夜見の女王と白銀の騎士
 聖堂に行くには、この真っ直ぐに伸びる玄関廊下を抜け、吹き抜けのある広いホールを通る。
 廊下の敵兵は煙から逃げたようでもぬけの殻状態だ。
 立ち上がったユリウスは廊下の先にある茶色い両開きの扉を見据えた。

「聖堂へ急ごう。もたついているうちに逃げられるわけにはいかない」

(逃してなるものか)

 ユリウスはスペランツァの柄を強く握り締め、前へと進む。
 続くライルに騎士たちと自警団員も足並みを揃え、ホールへの扉を押し開けた。

 待ち伏せていた敵兵の姿を認めた直後、上階から矢の雨が一斉にユリウスたちを襲う。
 即座に防御態勢に転じ、次の矢が飛んでくる前にセオが素早く矢を射って応戦。
 番えては放ち、次々と弓兵の動きを封じる八面六臂の活躍に、一階ホールの敵を斬り伏せるライルが口笛を吹いた。

「いい腕だな、ユリウスの部下君!」

「お褒めに預かり光栄っス! 隊長! ここは俺らに任せて、聖堂へ!」

 聖堂への扉はすぐそこだ。
 ユリウスが「頼む!」と叫ぶように言うと、第三部隊の騎士たちは皆一様に頷いた。

 ライルのサーベルが扉を守る敵兵らの身体に食い込む。

「俺も共に行こう! どちらが先にメアリを助けられるか競争ってのはどうだ?」

「お前が勝っても褒美はないぞ」

「そりゃ残念だね。メアリの婿になれる権利でも貰おうと思ってたんだがな」

「戯言を」

 ユリウスはライルと共に扉を前に厚い壁を作る敵兵らの攻撃を防ぎ、払い、洗練された剣技で倒し、ついに聖堂への扉を押し開けた。
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