月夜見の女王と白銀の騎士
 揺らめく蝋燭の炎が灯す聖堂内。
 羽のごとく左右に広がる信徒席の中央通路の先、主祭壇に隻眼の青年に横抱きにされたメアリを見つけた。

「メアリ!」

 意識が朦朧としているのか、メアリがユリウスへと弱々しく手を伸ばす。
 駆け出し、その手を取ろうとするも、祭壇脇の扉から現れた数名の敵兵に阻まれて足を止めた。

(十、十一、十二……ライルとふたりなら難しくはない数だ。だが、相手をしている間に逃げられる確率は高い。むしろ、今の時間までここにいたのが奇跡だな。君がうまく抵抗して時間を稼いでくれたのか、メアリ)

 意識を失ったメアリを見つめ、ユリウスは眉を寄せる。

「メアリに何をした」

 傷つけてはならないと兵の間に通達があったようだが、おとなしくさせる為に殴って気絶でもさせたのではと勘繰り、ユリウスは目つきを鋭くする。

「やあ、こんばんは。白銀の騎士、ユリウス皇子様」

 隻眼の青年は、首を傾げて微笑んだ。

(この顔、ランベルト大侯爵の従者か……)

 謁見の間にいた人物だと気付き、城に留まり攫ったのだと合点がいく。
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