月夜見の女王と白銀の騎士
 行く手を阻むかの如く足元に刺さった矢を見て、青年はむっとした。

「巫女様に当たったらどうすんだよ」

「陛下を解放するっス!」

 セオが再び矢を番え、また放つ。

(やはり傷つけないよう指示が出ているのか)

 メアリを庇って身体を捻った青年の動きにユリウスは確信し、ならば遠慮はいらないと「セオ! サポートを頼む!」と告げて走り出した。

「お任せっス!」

 意気揚々とセオが答えたタイミングで残りの騎士や自警団員たちも駆けつけ、壁となっていた敵兵たちを一斉に蹴散らしていく。

 焦りに舌を打った青年はいよいよ走り出し裏口を目指そうとしたが、すでに裏にも騎士団が迫っている気配を察知し、地下坑道への階段を下った。

 その背を追うユリウスは、坑道内のひんやりとした空気を感じながら距離を縮めていく。

(坑道の出口は塞がれている。ここに逃げ場はない)

 ただ、少々入り組んだ構造であるため、見失えば面倒だ。
 ユリウスは頭に叩き込んだ坑道の地図を思い浮かべ、青年が脇道に反れるように剣を投げつけた。

「あっぷなっ」

 慌てて避けた青年は、追いつかれないようスピードを保つべく右折する。

 青年が曲がった先は緩やかに弧を描く一本道だ。
 そして、その道はユリウスが走る道へと戻るように繋がっている。
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