月夜見の女王と白銀の騎士
「ランベルト様は、ダリオが現れなければ行動に移さなかったかもしれません。あの方も、今回の事件の被害者だと私は思います」

 ランベルトの最期を思い出しながら話すメアリにイアンは「そうですね」と肯定する。

「ですが、暗殺に踏み出した。唆されて踏み出さない者もいる。しかしあの方は踏み出したのです。女王を攫い、手にかけようとした。その点をしっかりと胸に留め、どのような処遇にするかお決めください」

「……わかりました」

 幸い、ランベルトの遺体は燃やされる前だったため、屋敷へと移送された。
 罪を犯した為にアクアルーナの姓を持っていても城の礼拝堂で葬儀はできない。
 明日、城下町の教会にてひっそりと弔われることを、今朝、ユリウスから聞いていた。

(せめて、しっかりと見送ってあげられたら良かったのに)

 死の間際、自分へと手を伸ばしていたランベルト。

『な、ぜ……誰も……わ……しを、認めて、くれ……ぬの……』

 認められたかったという本音を、メアリは受け取ることも応えることもできなかった。
 少しでも幸福であったと思える瞬間が、ランベルトにはいくつあったのか。
 そして……。

「ダリオは……隻眼の、オッドアイの青年は、捕らえられた者の中にいますか?」

 自らに与えられたのは不幸とだと言っていたダリオはどうなったのか。

 問いかけるメアリに答えたのは、側に控えていたユリウスだ。

「彼は、毒を飲んで自害しました」

 短く語られたダリオの結末に、メアリの眉が下がる。
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