月夜見の女王と白銀の騎士
「飲んだら寝台へ。明日の朝、君を起こすように侍女に伝えておくよ」

 てっきり共に過ごすとばかり思っていたメアリは、グラスを両手で包むようにしながら目を見張った。

「帰るの?」

「俺がいたらゆっくり眠れないだろう?」

「そんなことないわ」

 むしろ、ふたりの時間を大切に過ごすことで、乱れた自分の心を落ち着けたいと考えていたメアリの顎に、ユリウスは男らしくも美しい指を添えた。

「白状すると、本当は俺がゆっくり眠れないんだ。一緒にいたら、君を抱きたくてたまらなくなるだろうから」

 優しく響く甘やかな声で告げると、ユリウスはそのままメアリの唇を愛しむように奪う。

「続きは君が元気になったら。おやすみ、メアリ」

「おやすみなさい、ユリウス」

 メアリが答えると、ユリウスはもう一度だけ軽く口づけを残し去っていった。

 部屋に残されたのは、メアリと、ユリウスの優しい体温と残り香。

 メアリはそれが消えないうちに暖かなブランケットに潜り込み、明日は同盟会議が終わり次第ジョシュアに体力回復の薬湯をもらって来ることを心に決めた。










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