月夜見の女王と白銀の騎士
 ヴラフォス帝国も同盟関係となった今、グラリア大陸内において国同士による争いは終結している。

 どの国も同盟関係にある今、戦争に関する議題が減ったのは大きな変化だ。

「次にアクアルーナ、フォレスタット間の国境における野盗や山賊に関わる被害状況ですが……」

 大臣らがそれぞれの管轄に関して報告。

 それに対し、ライルは的確に返答していく。

「野盗に山賊も問題だが、デセルトの東の森に魔物が増えていて、現在王国兵はそちらに注力している。国境警備に割いている兵数に変わりはないが、場合によってはフォンタナに協力を要請するかもしれませんが、ご対応は可能ですか?」

「ええ、可能です。現在フォンタナの兵力は四百ほど……で、合っていますかな、オースティン騎士団長殿」

 皺がれた声の大臣が、メアリを挟んでイアンの反対側に座するオースティンに尋ねた。

「ええ、概ね。ちなみに、フォンタナの滝裏から通じる洞窟の件ですが、フォレスタット側の封鎖は?」

「ああ、陛下が攫われた際に使われたという洞窟か。封鎖は完了していますよ。噂では迷いの森側にも出入り口があるらしいですが、さすがに確認には行かせていません。あるかどうかわからないものを探しに行かせて、貴重な兵力と命を失うわけにはいかないのでね」

「仰る通りだ」

 魔物の巣窟である森への調査は危険度が高い。

 オースティンが力強く頷くと、話し合いは続き、良きところでイアンが「陛下、例のご提案を」とメアリを促した。
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