月夜見の女王と白銀の騎士
 翌日──。

 強く降り続いていた雨はすっかりと止み、朝から空は晴れ渡っていた。

 女王の塔から見える庭の花々を濡らしていた雨露が、すっかりと渇いた時刻のこと。

 午前の執務を終わらせたメアリは、昼食を済ませてすぐに医務室へと向かった。

「これは昨日手に入ったチャイブを煎じた薬湯だよ。昨日飲んだものより少し飲みにくいけど、疲労回復にはかなり効くはずだ」

 ジョシュアが説明する薬草は、大陸外から輸入されてくるものがほとんどで、アクアルーナではあまり栽培されていないものだ。

「ジョシュア先生、貴重な薬湯をありがとうございます」

「可愛いメアリのためなら例え火の中水の中だよ。昼夜問わず、むしろ早朝だろうが真夜中だろうが遠慮せずに僕を頼ってくれていいよ。ちなみに、昨日の薬湯はどうだった? 効いたかい?」

「はい! 今朝起きた時、最近続いていただるさが取れてました」

「それは良かった! なんなら今日はもうこのまま医務室で休んでいくといい」

 気遣うジョシュアが医務室の寝台をポンポンと叩くが、メアリは眉を下げて微笑む。

「今日はこのあと昨日の会議についての書状作成と、民には内緒で城下の視察に行く予定が入ってるんです」

 書状は白夜の神殿設立に関するもので、フォレスタットの女王宛てだ。

 メアリの直筆が望ましいとイアンに言われている。

 視察に関しては日程の変更は可能ではあるが、視察の際はユリウスが必ず護衛についてくれるので、メアリとしては変更をしたくないのが本音だ。

 ──今日に限っては特に。

 その理由は、昨日行われた近衛騎士入団試験によるもので、各部隊長は審査官として朝からコロシアムへ出向いていた。

 その為、ユリウスとは一昨日の夜に別れたきりで会っていないのだ。
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