月夜見の女王と白銀の騎士
 メアリは薬湯に口をつける。

 口内に苦みが広がり眉を寄せてしまうも、堪えて一気に飲み干した。

「女王となれば忙しいのは仕方ないだろうが、今夜は満月だ。無理せず、早めに部屋に戻った方がいい」

 ジョシュアは忠告しながらポケットに手を入れて、包み紙に包まれたキャンディーをひとつ手渡す。

 それは、はちみつの味がするもので、幼い頃からメアリが風邪をひくと、苦い薬湯のあとに必ずもらっていたものだ。

 メアリはありがたく受け取って早々に口内へと放り込む。

「月が昇る前には帰りますね」

「ああ。それと、後でメアリの部屋によく眠れるハーブティーを届けておくから、寝る前に飲むといい」

「はい、ありがとうございます。あと、飴も」

 甘くて美味しいですと頬を緩めるメアリを見て、ジョシュアは「女王になっても僕のメアリは可愛いなぁ」と目尻を下げた。

 父親代わりのジョシュアは、メアリが女王となっても変わらない態度で接する。

 そのことを心から嬉しく思うメアリが「先生も無理はしないで」とハグをしながら告げ、ジョシュアを喜びにむせび泣かせた時だ。

「メアリに対する先生の過剰な反応は相変わらずだな」

 医務室の扉を開けて、騎士服姿のウィルが入室してきた。
< 44 / 165 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop