月夜見の女王と白銀の騎士
「ちなみにノックはしましたよ。騒いでて聞こえないようだから勝手に入りました」
ジョシュアにうるさく咎められる前に続けたウィルは、ルーカスから頼まれたという薬のリストをジョシュアに手渡した。
ジョシュアは「また足りなくなったのか」と零しながらリストを確認しつつ薬の棚に手を伸ばす。
「お疲れ様、ウィル。何だかこうして会うのは久しぶりね」
「独占欲の強い第三部隊長様のおかげで、第二部隊はメアリと絡むことは少ないからな」
「ウィル、陛下と呼べ」
箱に薬を詰めながら窘めるジョシュアに、ウィルが「いや、あんたはどうなんですか」とツッコミを入れる。
「僕は特別だからいいんだ」
「じゃあ俺もここでは特別な幼馴染ということで」
「それなら、ここではみんな特別ってどう? そうすると私はずっとここにいたくなりそうだけど」
王女となってから畏まられることが増えたメアリには、今までのように話してもらえるならば最高に肩の力を抜ける場所になる。
魅力的過ぎて、入り浸ってしまいそうだ……などと、こんな話をイアンが聞いたら叱られそうだが、ジョシュアはキラキラと目を輝かせた。
「いいアイデアだ。それでずっと僕の元にいるといいさ!」
「先生は本当にブレないな。いいから仕事してください」
窘め返したウィルは、ジョシュアが医務室から通じる備品室に入るのを見てからメアリに視線を移す。
「メアリ、少しいいか」
僅かに声を潜めたウィルの様子に、メアリはそっと頷く。