月夜見の女王と白銀の騎士
 ライルの肩に戻ったフィーユにメアリが手を振ると、ユリウスが「団長を呼ぼう」とすぐさま動き、階下で弓を番えるセオに指示を出した。
 同じく評議会に出席しているイアンにも伝えるように別の部下に頼む。

「もし、あのメッセージの通りフォレスタットで誘拐を働く者たちがアクアルーナに入国していたとして、目的はなにかしら」

「新たな土地での人身売買の線が濃厚だろうけど、情報漏洩を防ぐために自身をも焼くというのが少し引っかかるな」

 命を絶つなら、服毒により自害する方が確実だ。
 毒が得られないとしても、焼身という手段をなかなか選ばないだろうことはメアリにも想像できる。
 生きたまま身を焼いていたというライルの話を思い出したメアリは、その異様さに背筋がゾッとし、宥めるように自身を抱き締めた。

 まだ行方知れずとなっている女性の無事を祈りながら。



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