月夜見の女王と白銀の騎士
 ライルから誘拐事件の話を聞いてから三日後。
 ここ最近は公務とあっても襲撃を警戒して城から出ることが許されなかったメアリだが、今日は違った。
 馬車に乗り込み向かう先は、様々な試合や演劇等のイベントが催される円形闘技場のコロシアム。
 メアリは本日、近衛騎士団、最終入団試験に立ち会うのだ。

 一次の筆記、二次の実技試験をクリアした者たちが御前試合に臨み、勝敗にかかわらずその才と能力をアピールする。
 これには毎年国王だけでなく王侯貴族らも出席。
 ただし、ランベルトの出席は大臣らの反対により認められず、晩餐会同様、ヴェロニカのみの参加となっている。

 厳重な警備の中コロシアムに到着したメアリは、特別に用意された豪華な席につくと、すぐ後ろにユリウスが控えた。
 メアリの隣には国賓であるライルが座っている。

「アクアルーナのコロシアムは美しいですね。白い壁は陛下の透き通るような肌の如く、描くアーチは陛下のしなやかなボディラインにも似ていて実に好みだ」

 本日も絶好調なライルの軽口に一応礼を述べつつ苦笑するメアリと、微笑みながら苛つくユリウス。

「ライル王子はアクアルーナのコロシアムは初めてですか?」

 メアリが尋ねると、ライルは水に囲まれたアリーナを眺める。
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