月夜見の女王と白銀の騎士
「ええ。先王陛下に拝謁した際は、王城と港を往復したのみでね。今回は色々と観光させてもらえて実に有意義な時間を過ごせてますよ。これで任務がなければ最高なんだが」

 おどけるように肩をすくめてみせたライル。
 メアリは合わせて微笑みつつも、ライルの持つ心の強さに感心する。

 親友の死と、その恋人の行方を追う任務。
 それは今のライルにとって何よりも優先したいものだろう。
 しかし、フォレスタットの王子として公務を疎かにせず、個人としての心痛は微塵も感じさせないのだ。

 アリーナに、騎士団長オースティンを先頭に候補者たちが入場し整列すると、最終入団試験の始まりを告げる銅鑼が鳴り響いた。
 自分の剣と盾となることを目指す者たち。
 彼らが命を賭す価値のある女王になれるよう、今後も精進することを胸に誓いながら、メアリは伸ばしていた背をさらにしゃんと立たせた。


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