月夜見の女王と白銀の騎士
 まずは、メアリの毒見係である検食官の男が試飲する。
 銀のスプーンでゆっくりとお茶をかき混ぜ、色の変色を確かめた。

 銀は、毒の成分に触れるとその部分が黒く変色するが、特に変化は見られず、味も問題ないと安全であることが証明され、メアリはひとまず胸をなでおろす。
 というよりも、今日の茶会は他の貴族の出席はない。
 ここで毒が入っていようものなら、犯人はヴェロニカである可能性が極めて高く、即牢獄行きとなる。
 そうなれば、ランベルトの関与も疑われることは誰にでも想像が容易い。
 ランベルトも、ヴェロニカも然り。
 そのような愚策は取らないだろうし、取るような浅慮な人物であれば、とうの昔に爵位を剥奪されているか、この世にはいなかっただろう。

 数日前、イアンが語ったことを思い出しながら、メアリはヴェロニカの用意したカップにお茶が注がれるのを見守る。

 カップは透明なガラスでできており、持ち手と縁は金色に輝いている。
 上品なカップを彩るお茶は黄金色。

(ユリウスの瞳の色に似ていて綺麗)

 ヴェロニカに「どうぞ」と勧められたアメリは、後ろに控えている愛しい人に触れるよう、丁寧な手つきでカップに触れる。

「陛下、まだ少し熱いので気をつけてくださいませ」

「はい。ヴェロニカ様、良かったらお菓子をどうぞ」

「まあ、私の好きなトフィーにカヌレにフロランタンが! 嬉しいですわ」

 メアリの侍女が運んできたケーキスタンドに乗る菓子は、どれもヴェロニカの好物だ。
 事前にイアンから情報を仕入れ、王城専属のパティシエールにアドバイスをもらいながら全てメアリが手作りした。
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