月夜見の女王と白銀の騎士
 非難されることは覚悟の上で、メアリを守る騎士の道を選んだ。
 その強い想いを改めて感じたメアリは、今すぐに抱き締めたい衝動に駆られながらも「私も共に尽くします」と答える。

「ありがとう、メアリ。それと、もうひとつごめん。ヴェロニカ様のこと」

「ユリウス……」

「君を危険に晒したのは俺の責任でもある」

 謝罪を受け、メアリははっきりと頭を振った。

「違うわ。悪いのはヴェロニカ様を騙して毒を仕込ませようとした誰かでしょう?」

「君は、ヴェロニカ様の言葉を信じているんだな」

「だって、私を殺してもユリウスは手に入らないもの」

 ランベルトも言っていたが、茶会で毒殺など犯人は自分だと主張するも同然であり、捨て身の愚策だ。

「そうだな、確かに目的と一致しない」

 ユリウスを手に入れるというのであれば、ヴェロニカが打ち明けた催眠という手段の方が納得がいく。
 ヴェロニカは騙されていたという方が、しっくりくるのだ。

「それに、謝罪するのは私の方。命を救われたりしたら、正式な場を設けて褒美を与えるものなんでしょう?」

「まあ、そういう場合が多いけど」

「私、まだ何もユリウスに渡せてなくて。イアン様にも相談しようと思ってるんだけど、バタバタしててまだ話せていないの」

「気にしなくていいよ。まだ犯人も捕まっていないし、落ち着いたら今回の件で活躍した者たちとまとめて与えるのでもいいんだ」

 慌てる必要はないと、皇子としての経験を踏まえてアドバイスするユリウスに、メアリはなるほどと心の中でメモを取る。
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