月夜見の女王と白銀の騎士

「ちなみに、何か欲しいものはある?」

 ユリウスにエスコートされ、階段を降りながら尋ねるメアリ。

「それなら……君を一日独り占めする権利を」

「えっ」

「ダメかな?」

 甘やかな声で強請られて、メアリは頬を染めて困惑する。

「ダメっていうか、それをみんなの前で言うの?」

 メアリが心配し恥ずかしがる方向が想像と違っていたユリウスは、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてから噴き出した。

「ふっ……くく」

「な、なんで笑うの?」

「いや、そっちの心配だったことがね。確かにそれは恥ずかしいよな」

 整然と並ぶ柱廊を渡り、大食堂の方角へと歩くメアリ。
 すれ違う衛兵や使用人らと挨拶をかわしつつ、「そっちって、他に何かある?」とメアリは問う。

 身体を重ね合ってもまだ純粋なメアリに、ユリウスは少し意地悪な笑みを見せた。

「君が心配すべきは、君の体の方だと思うけれど」

「身体?」

「一日中、君を抱いて寝台の上で過ごすつもりだから」

 耳元で囁かれ、ようやく意味を理解したメアリは耳まで真っ赤に染めた。
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