きっとこれは眠れない恋の証明。

そして、ゆっくりと全てを話し終えた。
感情を込める事なく淡々と。この男に声をかける前での家での出来事も、全部。

男は、慰めの言葉は口にしなかった。


「そっか。お父さん、今頃逃げてるかもしれないね」

「…どうでしょう」


今まで病院に行くと行ってどこか別の所に行っていたとするならば、父には我が家以外のどこかに居場所があったのかもしれない。あの電話の相手がそうなのだろうか。

「借金って今いくら位なの?」

その質問に素直に生々しい額を答えると、男は小さく頷いた。


「じゃあ、そのお金は俺が契約金として用立てるよ」

「は……?」

契約金?一体何の。

そんな疑問が表情に全面に出ていたのだろう。
男が私の顔を見て小さく笑った。

「借金の事は俺が片付ける。これまでの生活が一変するくらい年収も弾む。この条件でさ、俺の秘書ににならない?」

「え…」

思いがけない提案に驚いて体と頭が固まった。

──…秘書?

「現社長の秘書がそのまま俺にスライドする予定らしいんだけど、その人俺苦手でさぁ。あ、俺が次期社長だって言ったの覚えてる?」

「は、はい」

「だから、君の労働力を買いたいんだ」











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