きっとこれは眠れない恋の証明。
ただ、羽水社長と自分が結ばれたいなんてそんな事は微塵にも願ったりなどしていない。
好きな人に、好きになってほしい。付き合いたい結ばれたい。
…そう思うのが普通なのだろう、当たり前なのだろう。
現に自分の今までの恋がそうだった。
だけど、羽水社長に恋をしている今の私はそう願わない。羽水社長には幸せな恋をして欲しい。素敵な人と結ばれて欲しい。
だからきっと、その相手は私ではないのだ。
綺麗事ではなく、本当に側にいられるだけで幸せだと心から思えるのは羽水社長が初めてだった。
羽水社長がいつか恋をしたら、素敵な人が現れたら、その時には私も全力で羽水社長の恋を応援しよう。そうずっと心に決めていた。
そしてそのいつかは突然おとずれた。
「羽水社長。月刊プレジデントさんから、対談の依頼がありました」
朝。あくびをしながらまだ眠たそうな様子の羽水社長にそう述べる。
月刊プレジデントはビジネスマン御用達の人気ビジネス誌だ。羽水社長は前に単独でインタビュー取材を受けた事もある。
羽水プロダクションという大手の芸能プロダクションの社長がまだ20代だというだけでも注目を引くのに、そのビジュアルまで申し分ないとすると
世間が羽水社長に興味を持つ事は自然な事だ。