きっとこれは眠れない恋の証明。

「…そうか。桜が方向音痴な事は知ってるけど、まさか行きつけのスーパーまでの道を迷う位まで深刻だったとは、俺も思ってなかった」

京のそんな呆れたようなため息を聞いて、情けなさでカァっと顔が熱くなった。

「だってそれは、車に乗ってる時とは景色が少し違って…っ」

「そんなもん一緒だ」

そう一言で片付けられて、京の言っている事は正論だとわかっているのに剥れてしまった。

「羽水社長に何か言われたか?」

「え?」

何か言われたかと言われても、京の言ってる何かが何なのか分からずに内心で首を傾げる。一緒に買い物に行ったのだから何か話をする事は当たり前だ。

「何かって?」

「…いや、なんでもない」

何でも無いのなら、どうしてそんな事聞いたの?
そう重ねて聞くのも何だかしつこい様な気がして、少し訝しんだまま黙っておく。

「そういえば桜、表のポストに郵便物届いてたぞ」
「え、そうなの?」

取ってくるから待っていろと言われて京が部屋から出て行き、すぐに封筒を持って帰ってきた。

ありがとうといってその薄いミントグリーンの封筒を受け取る。事務所にでなく自宅に届いたという事は個人的な私宛の郵送物だという事だ。
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