きっとこれは眠れない恋の証明。
バラバラになった紙を、京と私でパズルをつくるように組み合わせていく。
そこまで小さく刻むように破られていたわけでは無かったから、つなぎ合わせていくのはそう難しくは無かった。
玄関から出て京の車に乗り込む私。
事務所の側を歩く私。
ドレスショップから出てくる京と私。
並んで歩く羽水社長と私。
「……っ」
あまりに驚いて声が出なかった。京に肩を支えられて、自分がふらついていたのだと分かった。
こんな事…一体誰が。
何の嫌がらせ…?
感じた事のない恐怖にゾクゾクとし、思わず京の服の袖をきゅっと掴む。
「京…」
「大丈夫だから。とりあえず暫くは家から出るな」
そう言って京が安心させてくれるようにゆっくりと私の体を抱き寄せる。京の温かい体温と匂いに包まれて、パニックをおこしかけていた頭が少しずつ落ち着いて冷静になっていった。
「でも明日は砂川さんが音源をもって事務所に来てくれる予定だから、私行かなきゃ」
「音源なら俺が受け取っておく」
「でも…」
ただのこんな嫌がらせに怯えて仕事を休むなんて出来ない。私は芝波プロダクションの社長なのだ。これをやった人がどういうつもりだったのかはよくわからないけれど、もしその狙いが私の仕事の邪魔をする事だとするらば。犯人の思い通りになんてなってやりたくない。
そう思って、だから明日もいつもどおり仕事に行きたいと京に話しても、京は頑なに首を縦に振ってくれなかった。