きっとこれは眠れない恋の証明。

その時、ローテーブルに置いていたスマホが着信で震えた。スマホを手に取り確認すると、着信相手は京だという事がわかった。

直ぐに画面をスライドさせて電話に出る。

「もしもし京…?」

「おはよう桜。その、昨日の事なんだが」

昨日の事。
そう言われて無意識に体が強張る。

「マンションに問い合わせて防犯カメラの映像を見せて貰ったんだ」

まだ今日が始まって間もないのに、そんなことまでやってくれていたのかと少し驚く。

「もしかしたら犯人が直接ポストに投函してる可能性もゼロではないと思って確認してみたけど、やっぱりカメラに映ってたのはただの配達員だった。特定するのも難しいな。とりあえず暫くはまだ様子見だ」

「うん…」

暫く。
京にとっての暫くとはどれくらいなのだろう。

「あと3日何もなかったら、普通に仕事に行っていい?」

「まぁいつまでも閉じ込めておくわけにもいかないからな。3日は駄目だ、とりあえず一週間」

「ええー…」


一週間もテレワークだなんてやっぱり少し大袈裟だろう、こんな悪戯のような嫌がらせが原因で。

「いいか、戸締りだけはちゃんとしておけよ。
宅配が来ても居留守を使え」

「ええ…宅配まで?」

それはいくらなんでも…と断ろうとしたが、馬鹿正直に反論しても二倍になって返ってくるだけだと口をつぐむ。

でも昨日の今日で、家の外に出るのが怖いのも事実だ。

わかったと返事をして、ここは素直に京の言うことを聞いておく事にした。








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