きっとこれは眠れない恋の証明。
「桜、今からパーティーに着ていく予定だったドレス着てこい」
「…は?」
そんな京の提案の意図が掴めずに、すっとんきょんな声が漏れた。
パーティーに着ていく予定だったドレスと言われれば、それは京がドレスショップで買ってくれた
紺の大人っぽいドレスで…。
そしてそれは今桜のクローゼットの中で眠ったままになっている。
「えっと…それはどういう…」
「いいから早く」
そう強く促され、仕方なくドレスに着替えに自分の部屋に入った。
…もう。いきなりドレスに着替えてこいなんて京ったら相変わらず強引だ。
でも、もうこのドレスも今日着なければいつ着れるのかわからないし、せっかく京が買ってくれたのに勿体ないのも確かだ。それに、このドレスをパーティーで着る事を楽しみにしていなかったかと聞かれればそれは嘘になる。
少しだけ胸を高鳴らせながら、袋からドレスを取り出し、全身鏡の前でドレスに着替える。
膝が隠れるくらいのドレープスカートは、実際に着てみると軽くて少しだけ透けていて、思わず魅入ってしまうほどに綺麗だ。
肩を出すのは寒いので、元々持っていた白いボレロを上から羽織る。
化粧も髪も何もしていないのに、ドレス姿で鏡の前に立つ自分は部屋着を着ていたさっきまでの自分とはまるで別人だった。