きっとこれは眠れない恋の証明。
脅迫めいたメールが届いたと聞いて落ち込んでいた気持ちが、少しだけ明るくなる。
京にはお見通しなのかもしれないが、私って実は案外単純なのかもしれない。
そんな事を心の中で呟きながらリビングに向かう。
リビングの奥では、京がキッチンに立って夕食を作ってくれている途中だった。
ただいつもと違うのは、テーブルにシャンパンか何かの飲み物らしきビンとグラスが置いてある事。
そして、その隣にはピンク色をした可愛いテディベアがつぶらな瞳をしてちょこんと座っていた。
「京、これ…」
「あぁ、着替えたか。今夕食作ってるから出来るまでゆっくりしてていいぞ。ちなみにそのテディベアは俺が用意したんじゃないからな」
京がこちらを振り向かないままでそう言う。
テディベアは俺が用意したんじゃないと釘をさされ、少しだけクスッとしてしまった。
そんな可愛い買い物をする京は想像できない。
「えっと、じゃあ誰が?」
「倉掛さんだ。見舞いに行けないから代わりにと預かった。悪い、お前がここ最近休んでる理由を聞かれて、その場しのぎで体調不良だと俺が答えてたんだ」
「倉掛君が…」
勿論私が休んでいたのは体調不良が理由では無かったのだが、心はずっと力んで疲れていたように思う。それが倉掛君のお陰で和んで少しずつ解けていくように感じた。