きっとこれは眠れない恋の証明。
すぐにデスクの電話から受話器をとり、登録しておいた芝波プロダクションに電話をかけた。
最初に受付の人が電話に出て、秘書の黒瀬さんに電話を繋いで貰うように頼む。
程なくして黒瀬さんに電話が繋がり、小さく挨拶をした後に受話器を羽水社長に預けた。
「もしもし黒瀬さん?羽水です。すみません突然。ちょっとお聞きしたい事があって」
『いえ、どうされました?』
いつもならこんな事は絶対にしないが、今回は芝波社長が関係している事もあって早瀬としても内容が気になり、黒瀬さんの応答が聞こえるよう電話に身を寄せた。
そんな私の行動に気がついた羽水社長が、小さく無声音に笑って電話をスピーカーモードに切り替えるボタンを押してくれた。
「もしかして最近、芝波さん悪戯とかストーカーっぽい事にあわれてたりします?」
そんな羽水社長の質問を不審に思ったのか、黒瀬さんの返事は一拍遅れた。
『どうしてそう思われるんですか?』
「実は今朝、うちのプロダクション宛にメールが届いたんです。"蹴落とせ"って文と一緒に、俺と芝波さんが並んで歩いてる写真が添付されてて。ただの悪戯かとも考えたんですけど、もしかしたらと思って連絡しました」
『…そうだったんですか。羽水社長にまで迷惑をおかけして申し訳ないです』
そう答えるという事は、もしかしてが当たっている。
『実は一週間程前から似たような類の郵送物やメールが芝波社長宛てに届いているんです。その火の粉が羽水社長にも飛んだのだと思います、申し訳ありません』
「…そうだったんですね。黒瀬さんが謝る事じゃないですよ。犯人の見当はついてます?」
『いえ、全くです。…お手数ですが、羽水社長宛てに届いたそのメールをこちらに送って貰ってもよろしいですか?』