きっとこれは眠れない恋の証明。
「勿論です、手掛かりは多い方が良い。今秘書に送らせます」
『すみません、ありがとうございます』
羽水社長に視線で頼まれ、私は直ぐにメールを転送した。
『ちなみに、どうして芝波社長ではなく僕に連絡を?』
「俺はタレントでも何でもないですし、あの写真がどこに撒かれようが構わない。あんなの脅しにも何にもならないんです。それに蹴落とせだなんて抽象的すぎる。でも俺が芝波プロダクションにこの事を連絡する事こそが計画通りだったんでしょう。…だとすると狙いは」
『──芝波桜への精神的負担、ですかね。』
そんな二人の会話を聞いてハッとする。
…だから羽水社長は芝波社長ではなく黒瀬さんに連絡を。
『先に俺に連絡をくれてありがとうございます』
「いえ。何かわかったら俺にも連絡を下さい。俺も芝波社長の事が心配なので」
『わかりました、何かわかったら伝えます。
今日はお電話いただいてありがとうございました』
✳︎
「…ただの悪戯じゃなかったんですね」
「そうだな」
羽水社長がどこか余裕のない表情を浮かべ目を伏せる。
心配ですね、なんてそんなわかりきった言葉は掛けない。
(…一体だれがこんな事)
形も見えない犯人の事を頭の中でずっと考えながら、私達はお互いの業務についた。