きっとこれは眠れない恋の証明。
京に抱きしめられるように肩を抱かれて、初めて自分がガクガクと震えていた事を知る。
「…京。お願い、ずっと側にいて」
そう言って京のワイシャツをきゅっと掴む。
「倉掛君は…私のせいで、あんな…」
社長室に飛び込んできた、倉掛君の痛々しい姿が脳裏から離れない。…私のせいだ。私のせいで倉掛君はあんな酷い目にあったんだ。
倉掛君には何の身に覚えのない事で、あんな事に。
「桜のせいじゃない。悪いのは全部犯人の男だ。気に病む必要なんてない」
「………。」
気に病む必要なんてない。
こんな状況でそう言われて、あぁそうかと気にしないでいられる人なんてきっといない。
「京。私の事守ってくれるって言ったよね?
あれ、本当…?」
京に寄りかかりながら、自分でも驚くほど情けなく細い声でそう京に尋ねた。
そんな不毛な質問にも京は優しく、でも今までに聞いたことがないくらい低い声で力強く答えた。
「あぁ、本当だ。俺が守ってやるから、頼むからいつも俺の目の届く所にいてくれ」
「…うん」
私の事が憎いのなら、私に直接害を加えればいいのに。関係の無い人を、どうかこれ以上巻き込まないで欲しい。
倉掛君は、無理矢理服を脱がされそうになったと言っていた。男だと気がついて、その手を止めたと。
じゃあ…じゃあ、倉掛君がもし女だったら…?
もっと酷い事をされていたに違いない。
そんな事に気がついて背筋が冷えた。