きっとこれは眠れない恋の証明。
寝起きな事もあり、元々低めの京の声がいつもよりずっと低く、思わずビクっとする。
「えっと、たまには自分で一階のエントランスに新聞を取りに行こうかなって…」
そこで先を読まずに正直に答えたのがいけなかった。
「何度言ったらわかるんだ、一人で出歩くなって言っただろ…っ!」
「……っ」
堰を切ったような、そんな大きくて鋭い京の声に身が竦んだ。この上なく尖った京の視線にから逃げるように目を逸らす。
…京に、また心配をかけて怒らせてしまった。
朝方に、私の物音で目が覚めてしまうくらいに神経を尖らせていて、私の事を心配してくれているのに。
「ごめんなさい…」
俯きながらそう謝ると、京もまたハッとしたようにほんの一瞬だけ固まり、目を伏せた。
「ごめん、言い過ぎた。…新聞なら俺が取ってくるから、桜はここにいてくれ」
そう言って京はすれ違い様に私の頭に撫でるように軽く触れた後、上着を着替えて部屋を出て行った。