きっとこれは眠れない恋の証明。
そう言って桜の肩を掴むと、桜は俺の目を見て力強く頷いた。
「わかった。だから京は、私の事は心配しないで」
「あぁ。…でも、桜が心細いだろ。羽水社長に様子を見て貰うように頼んでおく」
「ええっ、そんな、大丈夫だよ」
桜が目を丸くして慌てたように大丈夫だと両手を振る。このマンションはオートロックでセキュリティもちゃんとしているし、確かに家の中にいる限り安全だとは思うが…
心細いのは桜ではなく俺の方なのだろう。
恋愛の話をするなら、羽水翔は俺の敵だ。二人を接触させる機会を作ることは、敵に塩を送るようなものなのかもしれない。
でもこんな状況で、俺の浮ついたそんな気持ちはどうでもいい事だ。
…桜が無事でいてくれれば、もうそれだけでいい。その為には、俺以外の人間の力も必要だ。
「いいから言う事を聞いてくれ。
でも、絶対に他の人間を部屋に入れるなよ」
そう桜に釘を刺してから、俺はすぐに羽水社長に連絡を取った。