きっとこれは眠れない恋の証明。
「羽水さん…すみません、その盗聴器壊して下さい」
震える声でそう頼む。
盗聴器があるかもしれないと疑っていたのなら、こちらがそれに気がついた事をばれないようにするべきだった。咄嗟の事で頭が回らなかった。
奴は常に盗聴器の事をチェックしているだろうか。
…わからない。でももしそうなら気づかれた。
倉掛宗次郎が犯人だと気づいた事に気づかれた。
もしそれが命とりになったら…?
冷静さを失っていた自分らしくもない行動を激しく悔やむ。
でも今はやってしまった事を後悔している時間は無いのだと、アクセルを再び強く踏み込んだ。
県境は抜けた。早く、東京へ、倉掛宗次郎の家へ。
『盗聴器、壊しました』
「ありがとうございます。そのぬいぐるみを桜によこしたのはうちのタレントの倉掛宗次郎です。多分桜を連れだしたのも彼だ」
『そんな…。分かりました。倉掛の家は?』
「分かりません。倉掛の家には俺が今から関係者に聞いて向かいます、でも倉掛の家にいるとも限らない。すみません、警察にこの事を話しておいてください」
そう言ってカーナビのボタンを押して電話を切った。
次に急いで電話をかける先は砂川さんだ。
助手席に寝かせておいたスマホをとり、電話帳を開くのももどかしく直接番号を急いで打ち込み電話をかける。
(早く出ろ……っ)