きっとこれは眠れない恋の証明。
倉掛宗次郎が桜を苦しめていた犯人。
それは今でも受け入れ難い事だがきっと事実だ。
───多分、30代くらいの男です。ガタイが良くて、身長はすごく高いように感じたから…多分180センチくらいだったと思います。髪型は、フードを被っていてよくわかりませんでした。
あと、声が凄く低かった。掠れているような…ハスキーな声でした。
あれはダミーだ。あの日見知らぬ男に暴行を受けたというのも、自分に疑いの目が向かないための自作自演だったのだろう。
そんな事をしなくても、そもそも倉掛宗次郎はとても疑われるような人間じゃない。
そんな倉掛がわざわざ家まで訪ねてきたら。疑う余地のない倉掛を桜はきっと追い返しはしない。
…無理のない事だ。
俺がもっと早く気づいてやれていれば。
どうか無事でいてくれ。
桜に何かあったら俺が駄目なんだ。
倉掛の動機も考えている事もこれからの行動もまるで読めない。
冷静さを失った頭は気持ちを慎まず自分勝手な事をただただ願う。
──…俺の為に無事でいてくれ。