きっとこれは眠れない恋の証明。
──いいから言う事を聞いてくれ。でも、絶対に他の人間を部屋に入れるなよ。
京にさっき釘を打たれたばかりで、一瞬倉掛君を部屋に入れるのを戸惑ったが、そのまま追い返す事なんて私には出来なかった。
それに、倉掛君を警戒する必要はないと当然のように思っていたから。
微塵も疑っていなかったから。
それが、大きな間違いだった。
倉掛君を部屋に入れ、倉掛君の様子がおかしい事には気がついていた。
インターフォンの画面越しでは泣いていた筈の倉掛君の目にはもう涙は浮かんでおらず、まるで氷のように冷たい目をして私を見て言った。
「場所を変えたい。ついて来て」
その声を聞いて一瞬自分の耳を疑った。
(私の知っている倉掛君の声じゃない)
私の知っている倉掛君の声は、まるで変声期前の少年のように高めで、優しい声な筈で。
「だ、駄目っ。私、京に外にでるなって言われてて…っ」