きっとこれは眠れない恋の証明。
「……っ!?」
急にガクンと体から力が抜けて──…
脳が思考する事を拒否するように、急に頭がぼうっとし、意識がまわらくなった。
「ちょっと大人しくしててね、芝波社長」
そう倉掛君に耳元で囁かれたが、驚く程に何も感じなかった。
ただ倉掛君に腕を引かれるままに自分の足で歩いてマンションを出て、無感情で促されるままに車に乗り込んだ。
「今、何も考えられないでしょ。意識はあるのに、体は動くのに、頭はぼーっとしている筈。
でも大丈夫だよ、じきに意識もはっきりしてくる。そういう薬なんだ」
✳︎
そして、私の意識は倉掛君の言葉通りはっきりと戻った。その時にはもう手足を縛られていて、どこか知らない場所へ連れてこられていた。
「黒瀬さんが気付いたって事は、もうすぐここに君を助けにくるんじゃない?」
「……。」
変だ。京に気付かれたと言っているのに、全く焦った様子がない。…むしろ、この事は想定内だと踏んでいたようにも感じる。