きっとこれは眠れない恋の証明。


暴走族の闘争に巻き込まれて亡くなったそうです。

義父は暴力団の一員ではありませんでしたが、関わりのあった人間であったことは確かです。

今回の犯行で使った銃は、義父さんの遺品の一つです。

義父さんを亡くした僕は、どうやって生きていったらいいのかわからなくなりました。

半身を失くした俺は、何にも満たされる事なく、ただ亡くなった義父さんの幻影を求めて彷徨うように生きていました。

バイトをして生活費を稼ぎ、ただお金を稼いでただ食事をして眠る生活を、どのくらい送ったのかな。

ただ、歌う事だけはやめなかったんです、僕。
義父が、僕の歌声を褒めてくれていたから。

ボイストレーニングスクールに通い始めたのも、義父が褒めてくれたこの声を伸ばしたいと思ったからでした。

スクールに通い始めて一ヶ月が経った頃、
その時僕は初めて砂川さんに出会いました。

綺麗な顔立ちが、涼やかな声が、少しだけ義父に似ていると思いました。

そして、砂川さんは僕の歌声を褒めてくれました。…義父が褒めてくれたように。

< 165 / 233 >

この作品をシェア

pagetop