きっとこれは眠れない恋の証明。
僕は、砂川さんに恋愛的な意味で好きになってもらう事はちゃんと諦めていました。
でも、商品として、砂川さんの役に立つ事は出来る。歌の上手い人形として、商品として砂川さんの役に立とう。愛されよう。
義父さんが亡くなって、それからずっと、失くしていた生きる意味をくれたのは砂川さんでした。
僕はそれで幸せだった。
そんな時、砂川さんに、ある社長に僕の事を紹介したいと声を掛けられました。
僕の、芸能界デビューの話でした。
砂川さんはプロデューサーなのだから、砂川さんが僕に声を掛けたのも近づいたのもこの為です。
いえ、別に、普通に嬉しかったんですよ。
ただ、紹介された社長さんは僕の想像とは感じがだいぶ違っていました。
若い女社長。そうは聞いていたものの、あまりに若く幼く見えた。
そして、砂川さんが彼女を気に入っているのだという事を、その時に初めて察しました。
砂川さんが芝波桜の髪に触れた時、今まで感じた事もないような激しい感情に襲われたんです。
嫉妬です。
嫉妬して嫉妬して嫉妬して仕方が無かった。
今まで砂川さんが他のどんな女を連れていても割り切れていたのに、なぜか芝波桜にだけは、激しく嫉妬して仕方がなかったんです。
いえ、嫉妬なんて言葉じゃ足りないくらいの激しい感情を、芝波桜には抱いていました。
その感情の名前に、今でも名前をつける事は出来ません。