きっとこれは眠れない恋の証明。



倉掛君が事情聴取の際に話した話を、あとで人から聞いた。

不思議なくらい、不気味なくらい、倉掛君に対する憎しみも憎悪も何も、何の感情も湧いてこなかった。

倉掛君にとって砂川さんが全てだと言うのなら、
私にとっては京が全てだった。


京は、死ななかった。
神様は、私から京を奪わなかった。

でも、京はベッドの上で眠ったまま目覚めない。
重度の昏睡状態に陥ったのだ。


「回復の可能性がゼロとは言えませんが、治療も回復も難しいでしょう。このまま一生眠ったままかもしれない。何せ打ち所が良くない。即死せず、そしてまだ生きているという事が奇跡的なんです。正直に申し上げますと、これから黒瀬さんの意識が戻る望みはないかと思われます」


「………。」


病室で、そんな医師の言葉を、私は信じられない気持ちで聞いていた。


京が…目覚めない…?

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