きっとこれは眠れない恋の証明。


「社長に就任したばかりの頃も、食事が喉を通らなくなって、それで倒れちゃった事もあって」

「あー…芝波さんって本当そういう所放っておけないよなぁ」

京からも何度かそう言われた事がある。
その時は別段何も気にしていなかったけれど…。

放っておけない。
周りから見たら…いや実際に、私は弱い人間だという事だ。

私は弱い。だからこうやって周りの人に手を差し伸べて貰って、迷惑をかけて。

京だって、弱い私を助けようと犠牲になった。


「…私は、周りから見て放っておけないような人ですか?」

「どうだろうね。俺が個人的にほっとけないだけかもしれない」

そう言って羽水社長が目を細めて小さく笑う。

それってどういう事だろうと首を傾げるのと同時に、頼んでもらったメニューが届いた。

家で食べるようなおかゆとは根本的に違うのだと感心するようなビジュアルのリゾットが目の前に置かれる。

羽水社長の前にはスライスしたトマトの乗ったリングィーネが並べられた。
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