きっとこれは眠れない恋の証明。
羽水社長に食べようかと声を掛けられ、いただきますと手を合わせた後、ゆっくりとリゾットをスプーンで口に運んだ。
「………。」
味はわからなかった。
でもあたたかい。
こんな優しい匂いのする食べ物を久しぶりに口にしたと思った。
…きっと、優しい味がするんだろうな。
そう思うの同時に、羽水社長が私の顔を見て目を見張っているのがわかった。そうして自分の頬に涙が流れている事に気がつく。
「あ…」
情けない声を溢した私の頬に羽水社長が手を伸ばし、涙を拭ってくれる。
「芝波さんを一人にしてこんな風に泣かせてる黒瀬さんが、今だけは憎いよ」
そう言って、羽水社長が苦笑するように小さく目を細めた。