きっとこれは眠れない恋の証明。

羽水社長に食べようかと声を掛けられ、いただきますと手を合わせた後、ゆっくりとリゾットをスプーンで口に運んだ。

「………。」

味はわからなかった。
でもあたたかい。

こんな優しい匂いのする食べ物を久しぶりに口にしたと思った。

…きっと、優しい味がするんだろうな。

そう思うの同時に、羽水社長が私の顔を見て目を見張っているのがわかった。そうして自分の頬に涙が流れている事に気がつく。

「あ…」

情けない声を溢した私の頬に羽水社長が手を伸ばし、涙を拭ってくれる。

「芝波さんを一人にしてこんな風に泣かせてる黒瀬さんが、今だけは憎いよ」

そう言って、羽水社長が苦笑するように小さく目を細めた。










< 183 / 233 >

この作品をシェア

pagetop