きっとこれは眠れない恋の証明。


「羽水社長」


仕事を終え、デスクの上のパソコンの電源を落とした羽水社長にそう声を掛けた。


「ん、どうした?」

私はこの人の秘書だ。
今から私が羽水社長に話そうとしている事は、完璧に私情を交えたもので。きっと社会人としても秘書としても失格な事だという自覚はある。


「芝波社長が落ち着くまで…羽水社長の秘書としての仕事をお休みいただけないでしょうか。芝波社長の秘書として、芝波社長のそばに居たいんです」

「………。」


私の言葉に、羽水社長が大きく目を見開いた。
当然だろう。突然芝波社長の秘書として働きたい、だなんて。

自分でも、自分がこんな事を羽水社長に提案しているという事が信じられない。


「なるほどね。もうすぐで芝波さんも仕事に復帰する。気心しれない新しい秘書を今の芝波さんの側におくより、早瀬が秘書として芝波さんを支えたいって思った…って感じ?」

「…はい」

見事に内心を言い当てられ、ただ静かに頷いた。
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